センター試験 左右の心室の間の壁

センター試験の過去問を調べていると、ある問題で目が止まりました。

それは平成31年度のセンター試験の生物基礎の問題です。

出題された問題は以下の通りです(少し文章を短くしています)。

生物基礎第2問 問2

(ヒトを含む哺乳類の)心臓において、右心室と左心室を仕切る壁に大きな穴が開いた場合に起きると考えられる血液循環の記述として最も適切なものを選べ。

1)肺静脈から左心房に戻ってきた血液の一部が、再び、肺へと送り出される。

2)肺動脈を流れる血液が、肺静脈より流れる血液よりも多くの酸素を含有する。

3)左心室から送り出された血液の一部が、全身をめぐった後、左心房へと戻る。

4)右心室から送り出された血液の一部が、肺に到達した後、右心房へと戻る。

この問題の答えは

解答・解説
1)肺静脈から左心房に戻ってきた血液の一部が、再び、肺へと送り出される。

です。

正直、生物基礎にしてはかなり難しい問題なのでは?

と思いました。

今回は、この問題のポイントや選択肢の解説を行います。

ポイント:心臓の部屋ごとの内圧

ヒトの心臓には右心房、右心室、左心房、左心室と4つの部屋があります。

(参照:『生物基礎 心臓の構造の基本』)

そして、この問題のポイントは4つの部屋の内圧の関係を理解していることです。

というのも、水が水圧の差で流れるのと同じように、

血液は高圧系の空間から低圧系の空間へ流れるからです。

4つの部屋の内圧

まず、一度問題から離れ、左右の心室の間に穴が開いていない心臓を考えます。

確認の為に下にヒトをはじめ哺乳類の血液循環の見取り図を載せておきます。

右心房の内圧

右心房は全身の臓器・組織をめぐり、流れの遅い血液が流れ込む部屋です。

その為、右心房の内圧は低く、ヒトの場合平均は3mmHgです。

右心室の内圧

右心室は、右心房から血液を受け取り、肺動脈へと血液を送り出す部屋です。

心臓が拡張し右心房からの血液を受け取るときの内圧は、ヒトの場合1−7mmHg

心臓が収縮して肺へと血液を送り出すときの内圧は、ヒトの場合15ー30mmHgです。

左心房の内圧

左心房は、肺からの返ってくる血液が流れ込む部屋です。

平均左心房内圧は、ヒトの場合8mmHgです。

右心房の圧力よりも2-3倍程高いです

もし、左心房の内圧が高すぎると、肺静脈や肺、肺動脈で血液が渋滞を起こしてしまいます。

左心室の内圧

左心室は、左心房から血液を受け取り、大動脈へと血液を送り出す部屋です。

全身の臓器・組織に過不足なく血液を送るので、物凄い強さで血液を押し出します。

その為、左室の内圧は非常に高く、心臓が収縮し血液を大動脈へ押し出しているときの内圧は、ヒトの場合100ー140mmHg程あります。

一方で、心臓が拡張し左心房から血液を受け取るときの内圧は、ヒトの場合4-12mmHgとなります。

大切なのは、右心室の圧力との比較です。

心臓が収縮しているときも、拡張しているときも、どちらも左心室の方が内圧が高いです。

4つの部屋の内圧のまとめ

ここまで紹介した内圧を心臓の模式図に書き込むと以下のようになります。

(ヒトの場合)

もちろん、この数値を覚えておけばこの問題は怖くありません。

しかし、生物基礎で覚えるべき数値ではないと思います。

生物基礎の段階で覚えておくべきは、

ヒトをはじめとした哺乳類の心臓において、左右心房の内圧を比較した場合、左右心室の内圧を比較した場合、どちらも左の方が高い。

という大雑把なイメージです。

問題解説

さて、それでは問題に戻りましょう。

問題では、左右の心室の間の壁(心室中隔)に穴が開いています。

つまり、左右の心室は繋がっている状態です。

先ほど説明した通り、心臓が収縮しているときも、拡張していうるときも、内圧は左心室が圧倒的に高いです。

その為、水が水圧の差で流れるのと同じように、

左心室(高圧系)から右心室(低圧系)へ血液が流れます。

それはすなわち、肺静脈から左心房、左心室へ返ってきた血液の一部が、

左心室から右心室へと流れ、再び、肺動脈を通って肺へと流れていく経路の完成を意味します。

従って、問題の答えは(1)です。

このように、左心室と右心室の間にある壁(心室中隔)に穴が空いている疾患を「心室中隔欠損症」と言います。

心室中隔欠損症は、先天性心疾患の中で最も頻度が高い疾患です。

他の選択肢の解説

この問題の間違い選択肢は、別の先天性心疾患の血液循環を説明したものです。

具体的には、3)4)の選択肢です。

この二つの選択肢は、「大血管転位症」という先天性心疾患の血液循環を説明した文章です。

この先天性心疾患は、左心室に肺動脈が、右心室に大動脈が繋がった疾患です。

その為、左心室が収縮して送り出された血液は肺で酸素化され、左心房へと帰ってきます。

また、右心室が収縮して送り出された血液は全身の臓器・組織をめぐって右心房へと帰ってきます。

まとめ

今回はセンター試験に出題された心臓の問題について解説しました。

この問題のポイントは心臓の各々の部屋の内圧です。

内圧の関係を覚えておくことが、この問題を解く鍵になります。

出題された問題文と正解選択肢は「心室中隔欠損症」という、最も頻度の高い先天性心疾患の血行動態を解説したものです。

生物基礎の段階では少し難しいと思います。

「センター試験 左右の心室の間の壁」への3件のフィードバック

  1. 内圧の数値を覚えていなくても感覚で分かることです。右心系は後ろにあるのは肺であって、ほぼ空気なので抵抗は低く、右心系の圧をかけなくても血液を送れる。左心系は後ろにあるのは臓器であり、肺に比べると断然抵抗が高いので圧が高くないと血液を送れません。

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  2. 左室の拡張期の血圧が60-90mmHgとなっていますが、6-9mmHgの誤植かと思います。心室の拡張期血圧が心房圧より低くないと、心房から心室に血液が流れません

    返信
    • コメントありがとうございます。

      ご指摘の通り入力の間違いでございました。また、訂正にあたり、再度、幾つかの資料で調べたところ、左室拡張期内圧は4-12mmHgとの記載が多く、そのように変更させていただきました。

      今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

      返信

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